アメリカの中間選挙とは
2006年11月4日
後数日で、アメリカの「中間選挙」が行われる。アメリカの「中間選挙」の時期になると、いつものことながら、各種メディアが大騒ぎをはじめる。何故、そんなにアメリカの「中間選挙」をメディアは大騒ぎして取り上げるのであろうか。案外、日本では知られていない「中間選挙」のことを少々説明することにする。
アメリカでは、4年に1度大統領選挙が行われる。そして、大統領は、二期8年しか就任できないことになっている。よって、二期目のブッシュ大統領も、その任期は残すところ2年ということだ。
4年に一度の大統領選の丁度中間時期に当たる2年目に、「中間選挙」は行われる。選挙の内容は、上院と下院の議員の選出選挙と州知事選挙である。上院も下院も、日本の衆参両議院のように解散がない。それぞれの任期は、上院が6年、下院が2年で改選となっている。しかし、上院も、2年ごとに上院議員全体の1/3を改選することになっている。よって、「中間選挙」では、上院の1/3と下院全員の改選を行うことになる。
上院とは、州の代表によって構成される。どの州からも、平等に2名選出されている。州の人口や面積の広さに関係なく、どの州からも2名ということに建国以来なっている。
下院は、国民の代表によって構成されている。有権者数に比例し区分けされた小選挙区から選出された、435名によって構成される。
アメリカは基本的に上下両院対等となっている。だが、下院には、予算などの歳費に関する法案を上院よりも先に審議する、「予算先議権」という権限が与えられている。また、大統領弾劾の訴追権も、下院が持っている。「大統領の助言者」としての上院には、大統領が行った「任命に対する同意権」、大統領が締結した「条約に対する同意権」などが与えられている。ここのところが、重要な部分である。
アメリカ史を振り返ってみると一目瞭然だが、多くの政権下で、大統領二期目の中間選挙では、大統領とは反対である野党が勝利するケースがほとんどである。それは、アメリカ人が強く抱く「平等」「公平」という意識に根ざす精神部分の影響が大きいと考えられる。大統領と政権与党が独走しないよう、中間選挙で国民は議会議員の多くを野党から選出する場合が多いということだ。
ところがこのような歴史の慣わしに反し、ここ暫くは、議会も共和党が優位に立ち続けてきた。その前は、カーター政権後暫く、共和党選出の故ロナルド・レーガン大統領時代も含め、議会は民主党に牛耳られていた。ところが、その後、クリントン前大統領の時代も含め、議会も共和党が長きに渡って牛耳ってきた。これまでのブッシュ政権6年間は、議会を共和党が牛耳っていたという状況下、強気な政策でここまでやってこられた。だが、今回の中間選挙で、共和党が負ける可能性は非常に高い。何故ならば、それまで、共和党が牛耳った議会が非常に長く続いていた。そして、そのような状況下、イラク戦争は泥沼化し、多くのアメリカ人兵士が命を落としている。そのことに対し、多くのアメリカ人が批判的感情を持ち出している。よって、今回の中間選挙で、共和党が負ける可能性が非常に高くなってきている。それも、上院でも、下院でも、という最悪の状況に陥る可能性が高まっているのだ。
それでは、その結果、何が起こるのであろうか? 答えは簡単である。万が一、上院でも下院でも共和党が負ければ、ブッシュ政権の残りの2年間は、手枷足枷状態での不自由政権になってしまうということだ。何故なら、予算も、人事も、政策も、全てが議会で不承認となり、前には一歩も進めない状況に陥り、この6年間のブッシュ政権の総括ばかりを民主党に迫られることになるからだ。しかし、そのようになってしまう可能性は、非常に高い。これは、色々な意味で注視しなければならない事態である。進行中の政策も全て見直されると考えなければならないからだ。勿論、対北朝鮮政策に関しても例外ではない。ことによっては、二国間協議へとブッシュは議会によって追い詰められる可能性もある。そうなれば、北朝鮮、金正日の思う壺である。由々しき問題である。だからこそ、イランをはじめとする中東問題があるにもかかわらず、ブッシュ大統領は、対北朝鮮に関する問題も、中間選挙までにある程度の強行策で迅速に解決したかったのである。しかし、時は既に遅しなのかもしれない。今後の動向を見守りたい。