政財界倶楽部         (恩田将葉見聞録)

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バランス感覚を失った日本の教育現場

バランス感覚を失った日本の教育現場
2006年10月31日

 ここのところ、教育現場に纏わる事件が連日報道されている。履修単位の問題、いじめの問題、どれもこれも自然発生した問題ではなく、ある意味人為的に起こった問題である。

 本来、教育現場というのは、偏向することなく、バランス感覚が常に保たれているべきである。ところが、戦後60年、日本の教育現場は、荒廃してしまったと言っても過言ではない。その根本には、日本人の精神を骨抜きにせんがための進駐軍による戦後政策が影響していることは間違いない。アメリカ人は、日本人の精神性に驚異を感じていた。彼らの思考回路では、到底理解できないことであった。だからこそ、骨抜きにしてしまうことが、今後再び日本をアメリカにとっての脅威として復活させないための道と思ったのだ。

 確かに、そのアメリカによる戦後政策の結果、日本は60年間平和を維持することができた。軍隊を必要とするような危機的状況に巻き込まれることもなかった。だが、そのような平和と引き換えに、日本人は魂を売ってしまったと言っても決して過言ではない。そのようなアメリカの戦後政策が、戦後60年にして、結実しているのである。アメリカも忘れていた、戦後政策の答えが、今、奇しくも日本の教育現場に症状としてあらわれている。

 一言で言ってしまえば、平和ボケしたが故に、教育現場でも五感が退化し、予期していなかった悲惨な事件が、次から次へと発生しているのだ。ある意味、アメリカの戦後政策は成功したのかもしれない。しかし、日本にとっては等閑にはできない重大なる問題に発展してしまったことは間違いない。

 戦後暫くの間は、日教組が強く、教育現場は荒れていた。自由の履き違えも甚だしい状況であった。大体、自国の国旗や国歌を認めない、とか掲揚したり斉唱したりしない、などということを教育現場で子供達に強要することの方が、教育という事柄を履き違えていること甚だしい。国旗や国歌を敬うな、と教育するような国が、世界中探してみても、日本以外に何処にあるというのだ。

 国旗を掲揚することが正しくないか、国歌を斉唱することが正しくないか、は成長した後子供達が独自に判断することであって、大人が、ましてや教師が強要するものではない。日教組の教師達は、国旗の掲揚と国歌の斉唱を学校で強制することに反対、と唱えているが、それは逆で、掲揚させず斉唱させぬことの方が、子供達へ対しての強制である。教師にその権利はない。

 大体、国旗を認めず、国歌を認めない、というのであれば、学校という教育現場でそのことを子供達に強要するまえに、まず国旗を変えようとか、国歌を変えようという議論を教育現場ではない場で為してからが筋であろう。無垢の子供達が勉学にいそしむべき学校という場で、一番の弱者である子供達を洗脳するような、そのようなことの方が非常識なことは一目瞭然である。そのことは、諸外国のメディアが、常に不思議に思い続けてきたことであった。

 昨今では、教育現場のバランスも少々変わってきた。以前のように、必ずしも日教組が強いというのでもない。日教組に所属する教師の数も年々少なくなってきた。それでも、尚、教育現場での問題は絶えない。何故ならば、やはり教育現場でのバランス感覚が欠如しているからだ。

 昔のように親は、教師を尊敬しなくなった。また、親に尊敬されるような教師も少なくなった。その結果、親は子供達の前で、教師の悪口を平気で言う。当然のことながら、そんな親による教師へ対しての批判ごとを耳にした子供達は、教師へ対して尊敬の念などもてなくなる。それどころか、教師を生徒が馬鹿にさえするようになってしまう。その結果、教室は荒廃する。教師によって、生徒達を纏められなくなってしまう。

 教師は、父母に攻撃されることをおそれ、信念を失う。その姿は、子供達に勘違いをさせる。教師は親がお金を払って雇っているのだから、自分達が言うことを聞く必要などない、と子供達は思ってしまう。

 同じようなことは、家庭内でも起こっている。母親は、子供達の前で、父親を罵倒する。その結果、子供達は父親を尊敬しなくなる。父親は家に居場所がなくなる。当然のことながら、家庭内では不協和音が生じる。そして、両親の不協和音を察知した子供達は、寂しさを癒やそうと、外へと目をむける。または、そのはけ口を、「いじめ」という形で、他人へと向ける。それらの行為は、どれも大人達や親達の行為の後姿を真似した姿なのである。

 教師は教師で、上と親しか見ず、生徒達へ目を向けない。クラスを上手く纏めたいが一心で、生徒の気を惹くために、生徒達が「いじめ」ている生徒を敢えてスケープゴートにしてしまう。本来、教師が救わなければならぬにも関わらず、いじめられた上に、教師にまでスケープゴートにされた生徒は、死を選ばざるを得ない状況に追い込まれる。

 「いじめ」によって死に追い込まれても、その後、その教師や学校長の態度は二転三転する。この期に及んで自らの保身や学校の存続のため、問題と正面から対峙しようとしない。記者会見を開き、ノウノウと「いじめ」が原因であるという証拠がないので、「いじめ」による死とは言えない、などと平気でのたまう。あのようなことを、記者会見の場で平気で言える校長は、教育者でもなければ、人間でもない、悪魔としか言いようがない。あのような人間を校長に奉る、現在の日本の教育現場に問題があることは誰の目にも明らかである。

 この教育現場で起こっている諸々の問題の解決策は、一つである。それぞれが、逃げず、真正面から対峙する。それだけである。小手先芸では、答えはだせない。その場凌ぎの対応でも、答えは得られない。子供達と真正面から対峙しなければ、この国の未来を支える子供達を救い出すことはできない。子供達を救い出すことができないということは、この国に未来が無いということに等しい。教師も、文科省の役人も、親も、全ての大人達も、そして、子供達も、思惑で言動せず、心で受け止め、心で感じ、心眼で見、心で聞き、心で語って、はじめて解決できる問題である。心で、対峙するしか解決方法はない。私は、強くそう思う。
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by seizaikai_club | 2006-10-31 13:37 | 教育

造反議員の復党問題に揺れる自民党

造反議員の復党問題に揺れる自民党
2006年10月27日

 昨年、小泉政権下、郵政改革解散による総選挙の際、郵政改革法案反対を表明し票を投じなかった衆参両院の50名の自民党議員の内、27名が造反議員というレッテルを貼られ自民党を追い出された。総選挙では、多くの造反組議員が落選し議席さえ失うということになった。まだ記憶に新しい。あの選挙と造反議員の処分は、小泉構造改革の大きな節目となる出来事であった。

 小泉元総理は、就任直前より、「自民党をぶっ壊す」と声高らかに訴えていた。それは、何も、彼が自民党を憎んでいるわけでも、自画自賛の我儘で言っているのでもなかった。戦後の日本政治は、自民党によるほぼ一党独裁政権と言っても過言ではなかった。独裁というと聞こえが悪いが、圧倒的な議席数を確保し続けた自民党が、実質永田町を、国会議事堂を、そして、与党という座を独占してきた歴史であった。確かに、その間、村山連立内閣や細川内閣の時のように、自民党が野党に下ったということもあった。しかし、そのような際も、直ぐに取って代わって自民党は与党の座に返り咲いた。それは、自民党には、強力な集票システムがあったからだ。故田中角栄によって全国に構築された特定郵便局は、実質地域の自民党支部のような役割を果たしていた。そうやって、特定郵便局以外にも組織票を確保することによって、戦後政治に自民党は君臨し続けた。しかし、そのことによる政治的デメリットも大きかった。

 本来、政治というものは、我が「政財界倶楽部」のスローガンでも謳っているように、国民の身近にあるべきものである。勿論、政治家に惚れ込んで投票する、という有権者も多くいるであろう。しかし、基本は、その時々の政策を見聞し、それぞれの有権者の考えに一番近い政治家や政党に投票する、という形が健全なスタイルであることは衆知の事実である。ところが、集票マシン自民党が君臨した日本の戦後政治では、政策論争は二の次であり、如何に集票するかということが優先された。その気運は、永田町に巣食う政治家に留まらず、国民にまで伝播していた。結果、党派は、政策論争の上に成り立つのではなく、党首や派閥の長に帰属するような、不健全な形態を当たり前のように継承し続けてきてしまった。例え、政策案では賛成できなくとも、自分の所属する派閥の長が右と言えば右を向かなければならず、左と言えば左を向かなければならなかった。派閥の長が、白といえば、黒と言いたくとも白と言わなければならなかった。これでは、派閥の意味を成さない。派閥は、政策を下に成されるものではなく、集票のためにのみなされるようになってしまっていた。

 だからと言って、派閥を否定するものではない。十人十色、人の価値観も思考回路も、皆違う。育ちも、環境も違うところから、永田町、国会に集められた政治家達である。意見を異にしても、まったく不思議ではない。よって、派閥というものが誕生することの方が自然である。ただ、戦後政治の問題は、その派閥を集票のために利用したというところにある。だから、小泉前総理は「自民党をぶっ壊す」と叫んだのだ。彼は、時代を読む洞察力に長けていた。その彼が、このまま派閥政治を続ければ、自民党は潰れると判断したのだ。よって、小泉前総理の「自民党をぶっ壊す」という叫びは、「自民党を愛してる」という叫びであり、「この国日本を愛してる」という雄叫びであったのだ。

 小泉前総理の発想だと、多分、派閥は、政策案件ごとに自然発生する分にはよろしいが、集票目的での徒党としての派閥は必要ない、ということであったのであろう。私は、そのように理解している。その証拠に、小泉前総理は、異例の解散総選挙を電撃的に強行した。

 解散総選挙というのは、総理大臣にとっては伝家の宝刀である。しかし、その伝家の宝刀は、総理の一存では抜けぬように戦後の自民党による派閥政治は、総理大臣に大きな足枷をしていた。実質、総理大臣というのは自民党による傀儡政権の先導役といっても過言ではなかった。それを、腹心である武部氏を官房長官に据えることで、自民党の旧態依然とした悪習を無視して、解散総選挙という伝家の宝刀を抜いたのだ。そして、その総選挙は、集票のための選挙ではなく、郵政改革という政策を国民に問うための選挙として行ったのだ。ある意味、小泉構造改革の集大成と言っても過言ではない選挙であった。また、自民党にとっても、日本国にとっても、そして、日本の政治にとっても、大きな転換点となった選挙であった。そのことは、後世、歴史が証明するであろう。

 そして、小泉前首相によって堰を切った大きな時代の流れの中で、安倍総理は誕生した。戦後生まれの初の総理として。その安倍総理も、思っていたよりもなかなかしたたかで、強運の政治家であった。就任直後に、訪中、訪韓を実現し、示し合わせたように北朝鮮は核実験を強行した。政治家というのは、大変な問題が山積された方が、活動が顕著に国民の目に晒され、その結果、「頑張っているではないか」という国民の共感を得ることができるものである。そのことは、今回の補欠選挙の結果が証明している。また、北朝鮮問題は、安倍総理の一番得意とするというか、力を入れていた問題である。その北朝鮮の問題が、これだけ緊張感を帯び、安全保障という意味でも、これだけの緊張感が北東アジア地区に広がるということは、安倍首相にとっても、来年の参議員選挙を控える自民党にとっても、非常に有利に働くことは間違いない。

 ただ、この復党問題をどのように対処するかで、国民を引き付けることにもなり、逆に離反させることにもなりかねない。

 小泉前首相が血の出る思いで成した構造改革。その構造改革の柱となった選挙に纏わる後遺症的な問題が、この造反議員の復党問題である。本来であれば、問答無用で、復党など有り得ない話であるはずだ。当然のことながら、政策案で意見を同じくすれば、個別にはその政策に基づき復党ということも有り得て当たり前である。だが、政策意見は等閑にして、ただ参議員選挙のために全ての造反議員を復党させる、などということをしてしまえば、間違いなくここまで順調に掴んできた国民の思いを離反させることは間違いない。

 そもそも、このようなドロドロしたことをもう止めようではないか、という発想の下小泉前首相がなしたことではないか。それを、政権が変わったからとあっさりと、全ての造反議員を復党させるなどという発想自体が可笑しい。有権者である国民を馬鹿にした話である。それぞれの造反議員が個別に自民党と政策論を闘わせ、意見の合意をみたら復党の可能性を模索すればよいことである。にもかかわらず、昨日の野田女史などは、「復党問題は、平沼氏に一任しているので」などと、時代の流れに逆行するような、国民を再度馬鹿にしたような発言を抜けぬけと繰り返している。本当に心ある政治家であるならば、偉そうに他の政治家に一任などせずに、それぞれの造反議員が個別に自民党と話をすれば良いのである。いや、そうすべきであり、それしか国民は納得しない。十把一絡げのように、平沼氏を先頭にたて、他の造反議員は後ろで控えて後に続くなど、もってのほかであるし、それでは時代への逆行でしかない。大体、平沼氏以外の造反議員は、政治家でありながら自分の意見も主張もないというのか? 自分一人では、自民党と政策意見調整すらできないというのか? もし、そうであるならば、そんな政治家はいらない。そんなだらしのない、自分自身の主張も持てない政治家を国民は望んでもいないし、日本には必要ない。有権者を馬鹿にするのもいい加減にして頂きたい。

 それでは、そのような状況下、何故、あの主義主張をしっかりと貫き通すことのできる安倍総理が、この造反議員復党問題では、歯切れの悪いことをしているのか? 答えは簡単である。彼の意識としては、小泉構造改革の一環である造反議員に対する復党問題の答えは決まっている。政策が違うのであれば復党を認めないのは当たり前、という考え方なのだ。ただ、安倍総理はじめ党内の執行部は、来年の参議員選挙を視野に入れ、平沼赳夫議員だけは復党させたい、と思っているのだ。そのように思っている党内の議員は多い。何故ならば、現状、民主党はハッキリ言ってしまえばまだまだ力不足である。嘗ては、小沢一郎も総理の器ではと期待された時期もあった。しかし、彼は時代を掴まえ損ねた。もう、時代遅れである。もう、時代が違ってしまった。小泉政権の5年間で、小沢一郎を必要としていた時代は過去のものになってしまったのだ。このような状況下、民主党内を見回してみても、「政権交代」などと目標設定だけは大袈裟にしているが、人事的にいっても、能力的にいっても、政権を交代して総理になれるような逸材が見当たらないというのが現状である。当然のことながら、そんな民主党が、無所属で浪人している平沼赳夫氏をほっておくわけがない。そのことを、安倍総理も、彼の党内の側近達も恐れている。よって、復党問題は、実は、平沼氏に続く全ての造反議員の問題ではないのだ。平沼氏以外の造反議員は、ただのオマケに過ぎない。にもかかわらず、野田女史があのような発言をすれば、自ら自分達はオマケでしかない、と世間に吹聴しているようなもので、まったくもって政治家としての資質を疑いたくなる珍事である。結局は、政治家ではなく、政治屋でしかない、というボロを出したということではないか。

 それでは、何故、平沼赳夫氏のみが、そんなにも持て囃されるのか? この答えも簡単である。平沼氏は、離党する前はポスト小泉の最有力候補であった。彼は、亀井派で、亀井静香の弟分のように振る舞い、肩で風を切って永田町を闊歩していた。何故なら、案外平沼氏というのは信念の人なのである。それでいて、柔軟性もあり、政治家としての資質は、そんなに低くない人なのだ。そんな柔軟性が、小泉訪朝後の拉致問題では、意見を二転三転させ、風見鶏などといって揶揄されることにもなったのだが。別に、彼が風見鶏だからではなく、ある意味、年甲斐もなく素直な人、ということなのだ。いや、気性と言った方が、正しいかもしれない。

 もともと、彼は、青嵐会の一員であった故中川一郎の秘書であった。当時、第一秘書に、鈴木宗男がいた。青嵐会といえば、石原慎太郎や中川一郎、浜田幸一や中尾栄一など、一本気で気性が激しく、愛国心の人一倍強い政治家達によって成された会であった。当時、永田町でも、青嵐会は恐れられた。正道をまっしぐらに突っ走る、現代の獅子のようとさえ言われたほどであった。しかし、どういうわけか、故中川一郎氏だけは、非業の死を遂げてしまった。青嵐会の血判状に名を連ねる政治家は、誰をとっても大器で豪傑であった。にもかかわらず、故中川一郎氏が非業の死を遂げたことは、永田町に大きな波紋を広げた。現在の政調会長中川昭一氏は、その故中川一郎氏の実子である。平沼氏は、その故中川一郎氏の秘書を経て政治家になった。政界入りしてからは、故中川氏の人脈を通じ、着々と平沼氏自身の人脈を広げ、離党するまでは、自民党内でもそれなりの位置にあった。

 もし、平沼氏が復党せずに、民主党に合流すれば、彼が総理対抗馬として浮上することは間違いない。上記したような政治力だけでなく、彼の血筋も、安倍総理と対抗するだけの経歴なのである。養父は、元内閣総理大臣故平沼騏一郎男爵。義父は、第15代徳川慶喜将軍の直系孫である故徳川慶光公爵。貴族院議員であった。平沼赳夫氏自身、自民党時代に、既に4度の大臣経験がある。年齢的にいっても、昭和14年(1939年)8月3日生まれの67歳。政治家として、一番脂が乗り切っている時期である。安倍総理はじめ、自民党執行部が、平沼氏が民主党に流れるのを恐れるのは当たり前のことである。

 これが、今回の造反議員復党問題の真相だ。平沼氏が民主党に流れ、民主党が政権を奪取した際の総理候補というのも、流れとしては良いのではないか。しかし、万が一、そうなった場合、現状、民主党内に、その平沼氏を支えられる閣僚候補がどれだけいるのであろうか? 非常に大きな疑問である。どちらにしても、選挙のための思惑で、政治を動かすことを卒業した小泉政権を踏襲するのであれば、今回の復党問題は、公正に、そして、偏向なく、政策論に於いての主義主張を重視した判断をして頂きたいものだ。この判断を誤れば、ここまでついてきた国民の気持が離れかねない。安倍政権発足以来、山積する外交の難問題よりも、この造反議員復党問題で、案外重要な岐路に、安倍首相は立たされているのかもしれない。
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by seizaikai_club | 2006-10-27 13:27 | 政治

関係各国の利害を満たす北朝鮮問題の終着点

関係各国の利害を満たす北朝鮮問題の終着点
2006年10月19日

 外交交渉を進める上で、その解決策は一つでないことは当たり前である。幾通りもの選択肢が存在し、それぞれの関係国の利害や思惑が複雑に絡み合う。それらの利害や思惑を消化しながら、最終地点へと向かうのが外交である。外交とは、地道な交渉と時間を必要とする一大事業である。どんなに努力しても、完璧という、100%満たされた答えを導き出すことは不可能である。何故なら、外交とは、一国の利害や思惑だけで為されるものではなく、複数の関係国の利害や思惑をできるだけ満たす形で解決することであるからだ。完璧ではなく、妥協の上に成り立つのが外交である。

 今回の朝鮮半島危機に際しても、日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国、そして、北朝鮮、それぞれの直接的関係国の思惑と利害を満たしての解決を図ろうとするところに難しさがある。特に、朝鮮半島危機に於いては、北朝鮮の思考回路や常識が常軌を逸しているため、解決の糸口を掴むことは至難の業である。

 解決策を模索するには、まずそれぞれの関係国の利害と思惑を整理する必要がある。そして、複雑に絡みあった関係国それぞれの利害や思惑を十分理解したうえで、それぞれの関係国の利害や思惑を一番満たす方法で、解決策を模索するしか方法はない。アメリカも、中国も、ロシアも、日本も、韓国も、それぞれにそのような作業をしている。

■アメリカの利害と思惑■
1)イランやイラクをはじめとする中東での難問を抱えるアメリカは、北東アジア地区で長期化するような戦争はしたくない。ただし、短期的な軍事行動で解決するという選択肢は捨てていない。
2)同盟国である日本や韓国を守る義務がある。
3)核の拡散を絶対に許すわけにはいかない。北朝鮮が核を開発すれば、イランやべネゼーラなど反米国への核拡散の可能性は高く、そうなればアメリカにとっても直接的な脅威になりかねない。
4)ブッシュ大統領の次期大統領は、民主党のヒラリー・クリントンの可能性が非常に高く、そうなれば北朝鮮との二国間協議ということになってしまう可能性がある。そうなれば、金正日の思う壺に陥ってしまう。よって、何としても、残りのブッシュ政権下で、ある程度、北朝鮮問題を解決しなければならない。
5)北朝鮮が崩壊すれば、北東アジア地区における日米ならびに韓米安保に基づくアメリカの軍事的負担を人的にも経済的にも軽減できる。
6)偽ドル、偽タバコ問題の根本的解決。

■中国の利害と思惑■
1)北朝鮮が崩壊すれば、朝鮮半島は韓国により統一される可能性が高い。韓国は、現状アメリカの同盟国である。よって、韓国が朝鮮半島を統一すれば、アメリカを後ろ盾にした民主主義国家と国境を接することになってしまう。それは、極力避けなければならない事態である。
2)北朝鮮が崩壊すれば、大量の難民が中国にも流れ込んでくる。現状でも、中国国内には多くの朝鮮族がおり、そこに北朝鮮からの難民が加われば、一大勢力となり独立運動を起こしかねない。故に、何としても北朝鮮よりの難民流入は阻止しなければならない。
3)北朝鮮内で経済特区を50年間運営するという交換条件の下、多額の経済援助を北朝鮮に対して行っている中国は、それらの援助金や援助事業を焦げ付かせたくない。
4)北京オリンピックと万国博覧会を数年後に控え、朝鮮半島での核保有を北朝鮮に許せば、国際社会での印象が悪くなり、それらの国際イベントに悪影響を及ぼしかねない。
5)本来、共産主義思想に於いて世襲は許されない。ところが、金正日は世襲で北朝鮮の支配者になっていることを、内心中国は許しがたいことと常々思っている。ただ、緩衝地帯として北朝鮮を温存させてきた。しかし、その北朝鮮が核武装するとなれば、中国にとって現政権下で北朝鮮を温存させる意味がなくなる。
6)北朝鮮が開発したロケットは、アメリカや日本まで届く射程距離ということは、中国も射程距離内であるということで、核が開発されれば中国にとっても脅威となる。

■ロシアの利害と思惑■
1)北朝鮮という国は、朝鮮戦争直後、ロシアの思惑によって、金日成という傀儡政権のもと設立された。しかし、ロシアの思惑に反し、金日成は着々と独立国家として北朝鮮を導きだした。そして、最終的には、目付役として北朝鮮政権内に残っていたロシア人を全て追い出してしまった。そのような経緯もあり、同盟国ではありながら、そのことについての恨みをロシアは未だに北朝鮮へ対して抱いている。
2)北朝鮮が崩壊することによって、難民がロシアへ押し寄せることを望んではいない。また、北朝鮮が開発したロケットは、アメリカや日本まで届く射程距離ということは、ロシアも射程距離内であるということで、核が開発されればロシアにとっても脅威となる。

■韓国の利害と思惑■
1)南北統一は、長年の念願。
2)南北離散家族問題や拉致問題の解決。
3)北朝鮮が崩壊した場合、ドイツのケースと酷似し、38度線がなくなったのち、現北朝鮮の経済までをも韓国が支えることになり、経済的負担が非常に大きくなる。
4)北朝鮮が核を保有すれば、韓国にとっては脅威となる。

■日本の利害と思惑■
1)北朝鮮が核を開発すれば、直接的に軍事的脅威となる。北東アジア地区ならびに日本の安全保障上非常に大きな脅威となる。日本国と日本人の日々の安全が脅かされる。
2)拉致問題の解決。
3)憲法や法律問題への波及。
4)北朝鮮が崩壊すれば、在日米軍の駐留規模を縮小することが可能となり、経済的負担も軽減される。また、基地問題等にとっても好材料となる。
5)世界で唯一の被爆国として、核開発には断固とした態度で反対しなければならない。

■北朝鮮の利害と思惑■
1)金正日の命の保障。
2)金正日の現状の生活保障。
3)現政権の存続保障。
4)金融制裁の解除。
5)経済的援助の確保。

 現状、北朝鮮による朝鮮半島危機は、このような関係各国の利害と思惑が複雑に絡まり合っている。これらの利害と思惑を出来る限り満足させながら、それぞれが妥協すると仮定して、解決策を模索してみると、以下のような選択肢が、最終案として浮かび上がってくる。勿論、全ては北朝鮮の出方次第である。北朝鮮の対応次第で、どのようにも答えは変化することを前置きしておく。

 アメリカを中心に、国連による多国籍軍によって、船舶検査もしくは臨検を行う。これは当初より、臨検の場での小競り合いを想定してのものだ。小競り合いが起こったところで、アメリカは正当防衛という大義名分の下、反撃する。当然のことながら、北朝鮮は、ソウルならびに日本へ対しての攻撃を開始する。それを合図に、アメリカを中心とした国連旗の下、多国籍軍は、本格的な軍事行動を開始する。それを機に、中国の人民解放軍は電撃的な速さで中朝国境を越え北朝鮮へと侵攻する。時を同じくして、北朝鮮軍内の反金正日軍人達がクーデターを起こす。そこで、間髪を入れず中国人民解放軍とアメリカを中心とした国連多国籍軍は、北朝鮮に四方からなだれ込み平壌を制圧する。中国人民解放軍は、金正日の身柄を確保する。そして、金正日の命を保障するという交換条件の下、金正日に政権を放棄させる。最終的には、内部よりのクーデターによる金政権崩壊というシナリオだ。金政権に変わる中国による傀儡政権を、間髪を入れずに発足させる。この結果、金正日政権は崩壊する。しかし、北朝鮮という国は存続する。よって、中国、韓国、ロシアへの難民流出を最小限に防げる。また、韓国の経済的負担という問題も考える必要がなくなる。韓国と新生北朝鮮の間では国交を開き、行き来が自由にできるようになる。結果として、離散家族問題も解決される。中国にとっても、民主主義国家と直接国境で接することを避けられ、本当の意味での緩衝国家として北朝鮮を再生できる。また、金正日政権を崩壊させたことによって、拉致問題も解決される。安倍政権も、アメリカも、人道問題解決ということで面子を保てる。朝鮮半島の核問題も解決される。自民党は、参議院選挙でも大勝し、安倍政権も小泉政権のごとく長期政権の可能性を得る。そして、何より、アメリカは、イランをはじめとする中東問題を抱える状況下、北東アジアで長期戦を強いられずに済む。また、イランやべネゼーラへの核拡散も防げる。最後に、北朝鮮国民が飢餓から救われ、人間らしい生活を夢見ることもできるようになる。金正日は、中国に身柄を確保され、命と人並み以上の生活が保障される。その結果、酒池肉林の余生を送る。しかし、健康的に問題を生じ、数年後、病に倒れ、悪しき独裁者として歴史の1ページにその名をとどめ、淋しくこの世を去る。死後、金正日は毒殺された、という噂がたつが、自業自得と人々は冷ややか。全ての関係国の利害と思惑が最大限満たされる終着点は、このようなシナリオにより導き出される。唐家璇、ライス、各国の重鎮が動き出した。それぞれの国の重鎮達は、上記したようなシナリオを描くべく、それぞれの利害と思惑に基づく外交交渉を開始した。間違いなく、歴史は動き出した。ただ、もう一つ、可能性が残されている。それは、ギリギリのところで、金正日が軟化するという可能性だ。核カードを捨てることをチラつかせながら六カ国協議を受け入れ、その交換条件として経済援助を主張する。この可能性も、まだ捨てられない。何故ならば、チキン・レースをする金正日は、自分の命が最優先のチキン(chicken:臆病者)だからだ。
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by seizaikai_club | 2006-10-19 14:22 | 朝鮮半島情勢

本音と建前を使い分けるアメリカ:軍事制裁を否定はしているが・・・!?

本音と建前を使い分けるアメリカ:軍事制裁を否定はしているが・・・!?
2006年10月14日

 アメリカ合衆国のブッシュ大統領は、北朝鮮による核実験実施を受け、「断固とした態度で広範囲に渡り制裁はなすが、軍事行動の可能性は否定する」という旨の声明を発表した。だが、同時に、「如何なる制裁、対抗措置も想定の範囲内である」という旨のことも言明した。ある意味、非常に矛盾した二つの発言だ。しかし、そこのところに、厳しい状況下に於ける、ブッシュ大統領のジレンマを感じ取ることができる。

 アメリカでは、中間選挙を目前に控えている。それにともない、イラク戦争をはじめとする中東政策の失敗を取沙汰された。ここにきて北朝鮮が核実験を強行したことで、北朝鮮をはじめとする東アジア政策も失敗したのでは、とブッシュ政権を批判するハリケーンがアメリカ中で吹き荒れている。次の大統領選が関わっているので、必要以上に野党民主党によるプロパガンダ戦略がなされていることは間違いない。そのハリケーンの目が、ヒラリー・クリントンであることは、誰の目にも明らかである。いずれにしても、ブッシュ政権の支持率は33%を割り、下落の一途を辿っている。イラクも中途半端な状況のまま、イランやベネゼエラを中心にした南米でも不穏な空気が漂っている。その上、北朝鮮で核実験が行われた。国民は大きな不満を抱いている。このような状況下、対北朝鮮への制裁措置も含め、あらゆるブッシュ大統領の判断に、世論や支持率が影響を及ぼさないわけがない。このように微妙な状況に追い込まれている、ブッシュ大統領の現状を端的に表しているのが、今回北朝鮮によって核実験が強行された直後に出されたブッシュ大統領による二度の声明であった。

 ブッシュ大統領が軍事的制裁を否定する発言をしたからといって、軍事行動の可能性がなくなったということではない。建前では軍事行動を否定しているが、本音の部分では、例え軍事行動によってでも、北朝鮮が核を保有し拡散しないように制裁を加えなければならない、とブッシュ大統領は思っているからだ。日本人のように本音と建前ということを使い分けることを一番苦手とするアメリカ人が、本音と建前を使い分けている。そのぐらい、北朝鮮が核を保有するということは、拡散の可能性があり、アメリカにとっては脅威なのだ。万が一、ベネゼエラに核弾頭と長距離弾道ミサイルが販売されれば、アメリカ本土は射程内である。また、イランに核弾頭と長距離弾道ミサイルが販売されれば、イスラエルは射程内である。そして、万が一、北朝鮮が、国際テロ組織に、核弾頭と長距離弾道ミサイルを販売すれば、それこそアメリカならびに同盟国は、直接的脅威に晒されることになる。

 ブッシュ大統領は、一昨日、この北朝鮮の問題に関し、新たに口を開いた。それは、この春、横田めぐみさんのご母堂が訪米し、ブッシュ大統領と面会した時の話であった。ブッシュ大統領は、「自らの政治家としての人生に於いて、娘を拉致され30年以上も娘を取り返すべく闘い続けていることを知り、これほどの悲しみを覚え、衝撃を受けたたことはない」と記者団に述べた。これは、非常に、意味深い発言であった。

 アメリカ人は、人道、人権問題に対し、非常に敏感な国民である。困った問題が起きると、アメリカの政治家は、直ぐに人道・人権問題を持ち出し、雲に巻き難所を乗り越えるということを常套手段としている。人道・人権問題を利用していると考えると腹も立つが、実際に人道・人権問題にアメリカ人が強く心を動かされるということも事実である。何故ならば、多種多様な民族によって構成されている合衆国であるというアメリカの事情があるからだ。このような政治環境を考慮に入れ、現在のような厳しい状況下で、ブッシュ大統領が横田めぐみさんをはじめとする拉致被害者の問題を声高にアメリカ国民に吹聴したということは、非常に大きな政治的意味がある。

 支持率が低迷し、未だ下落傾向にあるにもかかわらず、北朝鮮の問題では緊張感が高まる一方である。このままいけば、軍事行動に移行せざるを得ない可能性も非常に高くなってきた。というか、可能性を高めているのもブッシュ政権かもしれないが。万が一、止むを得ず軍事行動に移行した場合の批判軽減のために、拉致問題を敢えて今周知の事実にしておこうとしたことは間違いない。

 国連の安保理決議は、中国やロシアも制裁に関して行動を共にすることで歩み寄りを見せた。だが、その内容は国連憲章第7章第41条にとどまり、軍事制裁をも含む第42条を削除した形で為されることになった。このような状況下、建前の部分だけを見ていると、軍事行動は有り得ないのでは、と思ってしまうかもしれない。しかし、実際には、未だ軍事行動の可能性は、非常に高く残っている。

 国連安保理の決議は、中国やロシアを抜きにして強行しても、その効力は低下してしまう。何としても、全会一致で決議しなければ意味がないに等しい。ということで、国連安保理決議案は、中国やロシアの立場を尊重した建前的な決議案での可決ということになった。だが、実際には、第41条に、「臨検」が含まれている以上、軍事的行動に移行してしまう可能性を未だ含んでいる。

 「臨検」とは、「臨場検査」の略で、英語では「Visit」と表現される。これは、限りなく軍事行動に近い行動であり、戦争へのキッカケを作る行動として、アメリカが軍事行動へ移行するための常套手段とさえ言われている。英語でいう「Inspection」という「船舶検査」とは、似て非なるもので大分意味合いも印象も違ってくる。第42条が削除されているとはいっても、第41条に「臨検」が含まれている以上、軍事制裁をも含んでいるといっても過言ではないということだ。

 それでは、何故このような中国やロシアに押し切られるような、第42条を削除した制裁決議案にまでアメリカはじめ同盟国は譲歩しなければならないのか? それは、決議は全会一致でなければ北朝鮮へ対しての制裁威力が半減するからだ。中国やロシアの賛成を取り付けることは、必要不可欠である。だが、中国やロシアには、北朝鮮を庇わなければならない理由が三つある。そのことが、中国やロシアの足枷になっているのだ。本来であれば、アメリカや日本をも脅かすような射程距離のミサイルと核を北朝鮮が保有したということは、距離的な脅威という視点で考えれば、中国もロシアも射程内であり、北朝鮮のミサイル発射実験や核実験を容認できない立場であることは間違いない。中国やロシアもジレンマに立たされているのだ。

 中国もロシアも、朝鮮戦争に当たって北朝鮮と同盟国として条約を結んでいる。その条約の中には、北朝鮮が軍事的攻撃を受けた際には、中国もロシアも、無条件に北朝鮮を助けるべく軍事行動を起こす旨の条項が含まれている。そのことが、中国やロシアに二の足を踏ませる一番大きな原因の一つである。朝鮮戦争自体が、韓国と北朝鮮による、アメリカと中国・ロシアのための代理戦争的な意味合いが大きかった。長い年月が経過し、世界情勢も大きく変容した。しかし、条約は改定されず、そのまま生きている。

 もう一つの理由は、経済特区をはじめとする北朝鮮内への経済的援助や投資が焦げ付くことを、中国も、ロシアも、韓国も、回避したいと思っているからだ。

 そして、最後の理由は、難民の問題である。この問題は以前から言われていた。中国にしても、ロシアにしても、韓国にしても、北朝鮮が崩壊すれば、多くの難民が北朝鮮から陸続きの中国、ロシア、韓国へと流れ込み、経済的にも大きな影響を及ぼしかねない。特に、中国は、北京オリンピックと万国博覧会を控え、名実共に国際社会で認められるべく現在頑張っている。にもかかわらず、北朝鮮が崩壊したり、朝鮮半島で戦争が起こったりすれば、そのことが良からぬ影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかである。

 特に、中国は、国内問題として、独立を求める動きが中国国内各地で起こっている。朝鮮族も非常に大きな人口があり、中国としては気が気ではないのだ。中国にしろ、ロシアにしろ、韓国にしろ、そこのところが大きなジレンマである。朝鮮半島に核保有国の存在を許すことはできない。しかし、難民や経済的影響を大きく受けることも避けたい。それと、万が一、北朝鮮が崩壊すれば、現在の中朝国境は、中韓国境ということになり、アメリカが後ろだってする民主主義国家と直接的に国境を接してしまうことになる。そのことも、中国や韓国の頭を悩ませるところである。

 このような状況から判断すると、軍事行動や戦争になる確率は一見低いような気がしてしまう。だが、案外そうでもない理由が他にもある。アメリカも、朝鮮半島で戦争まではしたくない。だが、遠距離弾道ミサイルを開発したり、核を保有しようとしたりしている北朝鮮をこのまま黙って見逃すわけにも絶対いかない。今までは、北朝鮮に騙されながらも譲歩してきた。それが、米朝関係の歴史だ。しかし、今回はそうはいかない。何故ならば、アメリカのいうところの「レッド・ライン」を、北朝鮮は明らかに越えたからだ。

 「レッド・ライン」とは、非常に曖昧なものであり、今まではアメリカ以外明確なところはわからなかった。だが、「レッド・ライン」は軍事介入をも視野に入れるか否かの岐路であることは間違いない、とだけ我々も理解していた。そして今回、北朝鮮が核実験を強行したことで、ブッシュ大統領もライス国務長官も、この「レッド・ライン」に関しての定義を明確にした。このことは、非常に大きな意味を持つ。

 軍事制裁の可能性はない、といくらブッシュ大統領が明言しても、核の移転、即ち核の拡散こそが「レッド・ライン」だとするのであれば、間違いなくアメリカは軍事行動に移行する。長期的な戦争は望まないであろうが、ピンポイントでの各施設もしくは金正日への攻撃は、十分に想定内ということになる。そして、その判断を為すがための術として、強行なる臨検を行うことが考えられる。そうなれば、当然、臨検に於いて武力衝突の可能性が出る。いくら軍事制裁の可能性はないと明言していても、北朝鮮が先制攻撃してきたものに対し、正当防衛的攻撃をアメリカがしかけないわけがない。そこから、大きな軍事行動に発展する、というのがアメリカの狙っている路線であろう。そうすれば、アメリカにとっては、大義名分もあり、アメリカ国民からの批判も回避できる。

 或いは、中国やロシアも、腹の内では同じことを望んでいるのかもしれない。しかし、上記したような理由により、立場や面子もあり表立って北朝鮮を追い詰めるようなことをいえない。中国は、急遽、胡錦濤中華人民共和国国家主席の特使として、唐家璇国務委員をアメリカとロシアへ派遣し、ライス国務長官と会談してブッシュ大統領にも面会させた。会談の内容等は、一切明かされていない。ライス国務長官と唐家璇国務委員の間で一体何が話し合われたのか、ブッシュ大統領と何を話したのか、例え挨拶と世間話だけしかしてなくとも、北朝鮮は疑心暗鬼になっているはずだ。そこが、狙いだったに違いない。これは、中国による北朝鮮への無言の圧力であることは間違いない。アメリカにしても、中国側からアメリカに特使が来たということで面子が保たれ、中国とアメリカが手を組んだという演出ができ、より強い心理的圧力を北朝鮮に掛けられることになった。今回の唐家璇国務院訪米は、大人の対応であり、アメリカと中国の大物振りを見せ付けられた出来事であった。

 中国も、北朝鮮の言動には、いい加減辟易としだしていることは間違いない。大体、胡錦濤国家主席は、もともと虫唾が走るほど金正日を嫌っていると聞き及ぶ。その理由は、共産主義では有り得ない世襲で北朝鮮を手に入れ、国民を苦しめ贅沢三昧を続ける金正日を、共産主義を冒涜する悪党と捉えているようだ。アメリカと北朝鮮の間で、軍事的紛争が起こり、北朝鮮が崩壊するようなことになっても、それはそれでよいのでは、とも思っているようだ。その証拠に、河南省確山の中国人民軍演習場で、中国人民解放軍済南軍区機械化歩兵部隊が、対北朝鮮戦を思わせる実弾演習を開始したという情報も入ってきている。これが、北朝鮮侵攻作戦のための演習ではなく対北朝鮮戦の演習であることを祈る。

 どちらにしても、日本にできることは限られている。経済制裁を強行することは当たり前。臨検はじめ軍事行動に近い制裁措置が同盟国によって為されれば、その後方支援をすることも当たり前。法律的な問題は、多々あるであろう。だが、周辺事態法を適用しようが、特措法で対処しようが、北朝鮮はアメリカを引きずり出したいとはいえ、安全保障上北朝鮮の第一ターゲットで、日本が北朝鮮の敵国であることは間違いない。日本が一番の当事国である以上、法律的問題を理由にして、日本は何もお手伝いできません、では筋が通らない。そんなことをすれば、国際社会に於いて、日本が後ろ指を指されることになることは間違いない。

 日本は、世界で唯一の被爆国である。だからこそ、原爆を日本に投下したアメリカは、その罪の意識からも、戦後日本をアメリカの弟分のように大切にしてきた。平和憲法により戦争を放棄させつつ、日本の安全保障の面では日米同盟によって、まるで夫が妻を守るがごとくにアメリカは日本を守ってきた。それは、地理的な意味や、軍事戦略上の意味や、政治的意味もあるが、アメリカには、口に出すことはできないが、原爆を日本に投下した負い目があるからだ。同時に、黒船以来の因縁があり、また、まったく正反対の国民性からか、遠い昔よりお互いに惹き合うところもあるからだ。肌が合うといったら大袈裟だが、他国間よりも、日本とアメリカは双方、違和感が少ない間柄だと感じている。パートナーとしても、紆余曲折はあるが、上手くいく間柄であることは歴史が証明している。

 話が多少横道に逸れてしまったが、唯一の被爆国である日本は、非核を訴える権利を無条件で有する世界中唯一の国である。その日本が、再び核の脅威に晒されるということは、如何なる理由があっても許されない。そのことは、被爆国日本にとっても、アメリカにとっても同じことである。被爆国日本は、原爆加害国アメリカを衝き動かし、隣国北朝鮮が核保有国になろうとしていることを、いかなる方法を使っても阻止するべきである。そのことは、日本に許された権利であり、世界平和への大きな一歩であることは間違いない。
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by seizaikai_club | 2006-10-14 13:47 | 朝鮮半島情勢

北朝鮮関連の情報で信頼できるコメンテーター五人衆

北朝鮮関連の情報で信頼できるコメンテーター五人衆
2006年10月13日

 テレビ等のメディアを見ていると、北朝鮮の問題に関し、非常に多くのコメンテーターが、まるで見てきたかのようなコメントをしている。北朝鮮事情の専門家として、有名大学の教授とか、軍事評論家だとか、元北朝鮮政府内にいたという脱北者だとか、色々な人々が色々なことをもっともらしく言っている。しかし、それらのコメンテーターの中で、偏向せず、正しい情報を慎重にコメントしている人々が数人いる。だが、メディアは視聴率を獲得できるような面白いことを言ったりする、わけのわからないコメンテーターを多用し、そのような信憑性の高い、正確な情報をコメントする真面目なコメンテーターを、ある意味蔑ろにしているようにさえ見える。いい加減なことを言っているコメンテーターに限って押しが強く、人を掻き分けて前へ前へと自分のいい加減な意見を押し出す。だが、視聴者からしたら、見ていては面白いのかもしれない。ところが、真面目に調査し、視聴者へ対しても真面目に対峙しているコメンテーターは、派手さや押しの強さがないがために、隅に追いやられてしまっている。ワイドショーではないのだから、面白さで判断するのではなく、情報の正確さで判断してもらいたい。悲しむべきことだ。こういう、真面目に日本の国のことを考えてコメントをしているコメンテーターの言葉に、もっと視聴者、国民、そして、メディアは耳を傾けるべきだ。優良コメンテーターは以下の通りである。

1)拓殖大学海外事情研究所所長 森本 敏 
2)国際政治・軍事アナリスト 小川 和久
3)関西大学教授・RENK代表 李 英和
4)コリア・レポート編集長 辺 真一
5)元北朝鮮労働党書記・脱北政治亡命者 ファン・ジャン・ヨプ
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by seizaikai_club | 2006-10-13 18:07 | 朝鮮半島情勢

日本による追加制裁へ対しての北朝鮮による対抗措置の可能性

日本による追加制裁へ対しての北朝鮮による対抗措置の可能性
2006年10月13日

 北朝鮮による核実験実施発表を受け、日本政府が追加制裁に踏み切ることを安倍総理が発表した。その直後、北朝鮮のソン・イルホ日朝国交正常化交渉担当大使は、「もし、日本政府が追加制裁に踏み切れば、必ず対抗措置を講じることになるであろう」と強い口調で述べた。同時に、「安倍新首相の言動も注意深く見守っている」と、日本の出方次第では軍事行動も含めた対抗措置を考慮している、と意味合いにもとれるような含みのある高圧的な言葉を吐いた。

 このソン・イルホ日朝国交正常化交渉担当大使の言葉を受け、日本のメディアは一斉に色めき立った。そして、対抗措置の可能性につき各メディアが、ワイドショー的に騒ぎ立てだした。多くのコメンテーターが、根拠もないことを鬼の首でもとったかのように言及している。

 北朝鮮による対抗措置として考えられることは、可能性としていくつかある。だが、直接的に、日本の領土に核弾頭を搭載するしないにかかわらず、ミサイルを撃ち込むようなことは、自らの退路を断つことになるので、先々は成り行き次第でわからないが、現段階では行わないであろう。ただ、考えられる可能性は以下の通りである。

1)日本の頭上を飛び越えて、太平洋に着弾するようなミサイル発射。ミサイル発射実験の名目でやる のか、攻撃という名目でやるのかは定かではないが。ただ、攻撃という名目でミサイルを太平洋上に 着弾させれば、それだけで軍事行動とみなされてしまうので、その可能性は極めて少ないであろう。よって、ミサイル発射実験という名目で、複数発のミサイルを、日本本土を飛び越えて太平洋に着弾させるであろう。

2)朝鮮戦争休戦協定の破棄。

3)日朝国交正常化平壌宣言の破棄。

 拉致被害者へ対しての暴力的制裁ということも考えられるが、それをしてしまえば、拉致自体を認めることになり、また人道・人権問題に対して非常にセンシティブなアメリカを必要以上に刺激してしまうことになるので、拉致被害者への何らかの制裁という行為の可能性は極めて低いと考えられる。

 ただ、ここで日本人が理解し、認識しておかなければならないことは、北朝鮮に隣接する日本はじめ韓国等アメリカ側同盟国、また、中国やロシアは、守らなければならないものがあるが、現状、北朝鮮には守るものが既になく、捨て身でコトに当たることができるということだ。言葉を変えれば、本気で戦争へと発展させてしまうことも、結果はどうあれ北朝鮮は判断できるということである。北朝鮮の現状だと、我々からすると馬鹿げた判断と思っても、その馬鹿げた判断を信じ行ってしまうということも十分考えられる。先が、見えなくなり、気が高揚し、意志を超えて思わぬ行動に突き進んでしまうということは、人にも、国にも起こりうるということだ。パールハーバー直前の日本が、そうであったように。状況的には、あの頃の日本の状況と、今の北朝鮮の状況、そして、心理状態は非常に酷似していると言っても過言ではない。そうである以上、最悪の事態をも含め、あらゆる情況を想定して、危機管理に当たらなければ、取り返しのつかぬことにもなりかねない。そのことは、日本政府にとどまらず、国民全体が理解し、意識しなければならない。
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by seizaikai_club | 2006-10-13 11:35 | 朝鮮半島情勢

非国民的質疑を繰り返す民主党西岡武夫議員に大きな疑問

非国民的質疑を繰り返す民主党西岡武夫議員に大きな疑問
2006年10月11日

 現在進行中の参議院予算委員会質疑で、民主党西岡武夫議員によってなされた竹島に関する質疑に、非常に大きな疑問を感じる。竹島の問題は、領土問題であり、国益に直接的に関わる大切な問題であることは間違いない。しかし、今、この時期に、この問題を国会の場で質疑するということには、非常に大きな疑問を感じざるを得ない。何故ならば、7月に北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射実験が繰り返され、一昨日の10月9日には、世界の反対を押し切って地下核実験を強行した。このことは、日本国の安全保障、東アジアの安全保障に直接的に関わる問題である。最優先の緊急課題である。このような状況下、国連では、親北朝鮮といわれてきた中国とロシアまでもが、核実験反対決議に賛成をしようとしている今、北朝鮮への反対行動の足並みを崩すような竹島の問題を、今この時期に取り上げ、安倍総理に迫る行為は理解できない。総理の発言次第では、北朝鮮への核実験反対の動きに水を差すことにもなりかねない。ということは、日本国の危機を故意に招きかねないと言っても過言ではない暴挙である。

 訪韓の際、竹島の問題を何故とりあげなかったのか、と盛んに質疑を繰り返していたが、北朝鮮が核実験を実施した直後の韓国首脳との会談の席で、わざわざそのような問題を取り上げることが、日本の今進行中の国益に関わる問題の解決の一助になるというのか? そんなわけがない。西岡議員は、日本国の安全保障よりも、自分と党のことの方が大切であるらしい。どんな政治家であれ、この状況下で、竹島の問題を訪韓の際に持ち出す政治家は、本当の意味で国を愛する日本人政治家とは言えない。

 いかにも愛国の徒であるかのごとく、愛国心を振りかざし、領土問題である竹島の問題を取り上げてはいるが、何事にも政治にはタイミングというものがある。北朝鮮が核実験を繰り返し、核を保有しようとしている、戦後の安全保障に於いて最も危機感が高まっている今、このような質疑をすることは、悪戯に韓国はじめ隣国の感情を逆撫でするだけで、日本の国益にまったく繋がらない暴挙である。これは、許されざる問題だ。本当に、この国を愛していれば、今竹島の問題を国会の場で取り上げ、韓国政府に抗議をせよ、そのことを約束しろ、などと安倍総理に言えるはずがない。そのような責め方は、安倍総理を追い詰めるのではなく、日本の国を追い詰めるだけの暴挙である。西岡議員の論調であると、竹島を日本国の領土だと主張することの方が、日本国全土の安全保障を優先させるよりも大切であるとしか聞こえず、日本国民の命を危機に晒すと言っても過言ではない、等閑にはできない質疑である。これは、日本国の議員として、西岡議員の基本的な資質にも抵触する由々しき問題である。

 西岡氏の質疑を聞いていると、日本国の安全保障よりも、民主党員として自民党を追い詰め、安倍総理を追い詰めることの方が、最優先されるというような発言にしか聞こえず、国民の一人として、非常に大きな憤りを覚える。このような感性の政治家や党は、日本国の足を引っ張るだけで、必要ない存在と言っても過言ではない。非常に大きな憤りを覚える。今、何を最優先してやらなければいけないか、ということを判断し質疑することが、政治家の資質の第一条件である。今、北朝鮮が何をしているか、ということがわかっていないのか。いい年をして、政治家であるにもかかわらず、そんな簡単なことも見えないのか。非常に自己中心的な自分勝手な平和ボケとしか言いようがない質疑であり許しがたい。笑い事ではない。自らの首を絞めているのは、西岡議員であり、民主党である。国民を馬鹿にするのも、いい加減にして頂きたい。
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by seizaikai_club | 2006-10-11 15:04 | 国会

北朝鮮の今後の行方

北朝鮮の今後の行方 
2006年10月10日

 中国と北朝鮮は、別の国である。また、北朝鮮とロシアも、別の国である。韓国と北朝鮮も、勿論、別の国である。このことを明確に理解しておかなければ、国際関係、特に北朝鮮のような異常な思考回路を有する国の行く末を見据えるに当たっては、分析ならびに判断を見誤ってしまうので、このことを最初に明記しておくことにする。

 それぞれの国は、自国の国益を最優先にして、全てを判断し決済を下し、それぞれの外交政策を推し進める。国際化が急速に進む状況下、国際関係に於いて、他国のことよりも自国のことを最優先することは、当たり前の常識である。にもかかわらず、テレビ等を賑わせている多くのコメンテーターは、いかにも中国やロシアが北朝鮮を、実は水面下で操っているような言い方をもっともらしくする。しかし、それは大きな誤りであり、視聴者に間違った認識を与えてしまうことになる。そのような間違った情報を真に受けて、視聴者がパニック状態に陥りかねないということもあるので、メディアは、コメンテーターの選択に、細心の注意を払って頂きたい。特に、このように緊張した状況下では。

 水面下で、思惑が一致する国通しが手を携えることはあるであろう。しかし、他国が他国の決裁権まで支配して、他国の行く末を左右するようなことは、映画の世界だけのことであり、決して有り得ない。何故ならば、それぞれの国は、自国の国益を最優先に考慮し行動するからである。

 昨日の北朝鮮による核実験実施により、朝鮮半島は、朝鮮戦争以来最も緊張した状況下に陥ることになった。1994年のクリントン政権下で発生した朝鮮半島危機以上の緊張状態であることは間違いない。ある意味、一触即発状態に突入してしまったと言っても過言ではない。多分、この1ヶ月が山場であろう。

 一部のコメンテーターは、7月のミサイル発射実験も、今回の核実験の実施も、北朝鮮の軍部が暴走しだした証拠だと各種メディアで吹聴している。しかし、その可能性は非常に低い。何故ならば、北朝鮮は、未だ金正日による独裁政権下であり、歴史上類を見ないほどの金一族による私物国家であるからだ。北朝鮮という屋号で呼ぶよりも、金一家と呼んだほうが的確であると言っても過言ではないほど、金家体制は浸透している。偏向した洗脳教育、そして、ほとんどの国民が、国内外の情勢について事実も真実も知らない。嘘で固められた奴隷国家が、北朝鮮である。金正日からしたら、北朝鮮国民は、国民ではなく奴隷なのだ。だから、喜び組だのと言って、自分が気に入った女性がいると直ぐに献上させたり、側女にしたり、ということも可能なのだ。その様相は、国というよりも、性欲に溺れた教祖によるオカルト宗教団体と言った方が的確かもしれない。国家の体を為していない。そのような国で、軍部が金正日に反発して暴走するということは考えられない。可能性として上げれば、軍部でも世代交代が起こり、若き血気盛んな軍人達が、国外のことは何も知らず、北朝鮮の軍事力も国力も最高であると信じ、北朝鮮のためにと暴走しているということであろう。しかし、それはクーデターを予感するような動きとは別のものであろう。確かに、水面下では反金正日を訴える人々も、北朝鮮国内にここ数年で現われている。だが、まだ軍部がクーデターを起こしたり、金正日に逆らったりという規模ではない。何故なら、金正日が一番大切なものは自分自身の命である。よって、自分の命を守るべく、あらゆる手段が講じられており、その恐怖政治下、金正日に逆らおうなどという人間は出てこない。出ても、レジスタンス的な活動にとどまる。ただ、以前に比べると、ここ数年は、中朝国境の出入りが容易になり、草の根的な撹乱分子も多く北朝鮮に潜入していると言われている。だが、現状、軍部が勝手にミサイル実験を行ったり、核実験を行ったりということは有り得ない。

 また、一部のコメンテーターは、マカオの北朝鮮口座がアメリカによって凍結されたため、それまでドル紙幣で軍幹部を押さえ込んでいた金正日が、金銭で軍幹部を押さえ込むことができなくなってきたので、自暴自棄になってミサイル発射実験や核実験を強行したと言っている。だが、これも有り得ない仮説である。何故ならば、元々、金正日は、欲張りで、ケチで、性欲が人一倍強い、ただの強欲男である。その彼が、本物のドル紙幣で、自国の軍幹部の頬を叩いて忠誠を誓わせているなどということは有り得ない。確かに、札束で軍幹部や党幹部を抑え込んでいるは間違いない。だが、本物のドル紙幣を、そのようなことに使うほど金正日は馬鹿ではないし、お人好しでもない。自国の軍幹部や党幹部に対して、本物のドル紙幣を使う必要などまったくないのだ。金正日が、彼ら幹部を手なずけるために使っていたドル紙幣は、全部偽物である。本物は、彼自身が使うためにあるのだ。そんな大切なものを、自分の部下のために使うわけがない。それが、金正日である。よって、懐が淋しくなり、幹部を掌握できなくなったので、ミサイル発射実験や核実験を暴走する軍部が強行したという見方も間違っている。確かに、本物のドル紙幣が入ってこなくなったことには、金正日自身大きな苛立ちと憤りを覚えている。だが、それが原因で軍部が暴走しだしたという説は、まったく根拠のない稚拙な仮設でしかない。

 また、多くのコメンテーターは、「最後まで中国は北朝鮮への制裁に反対し続け、国連に於いて拒否権の発動も有り得る」などとコメントしているが、何を根拠にそのような出鱈目なコメントしているのか不思議でならない。そんなに穿った目ではなく、澄んだ目で情勢を見極め、それぞれの国の立場に立ってみれば、自ずとどのような動きになるであろうかは見えてくる。どうも、皆コメンテーターは、北朝鮮のミサイルの射程距離がアメリカ本土まで届いたの、日本全土をカバーできるまでになったの、とアメリカや日本など北朝鮮にとっての敵国の話ばかりをしている。しかし、同じ射程距離で北朝鮮を中心にして円を描いて見れば答えが見えてくる。日本やアメリカに届くほどの射程距離を確保したということは、逆に言えば中国全土ならびにロシア全土へ対しても射程距離を確保したということになる。国同士の関係が、永遠に良好なまま保たれるなどということは有り得ない。そのことは、歴史が証明している。今までは、北朝鮮と中国、北朝鮮とロシアも、良い関係にあった。だが、そのような関係が、永遠に続く保障は何もない。万が一、何かのキッカケで、両国間の関係が悪化した時、長距離ミサイルや核を北朝鮮が保有していれば、中国やロシアもターゲットに成り得るのだ。危機管理的に発想すれば、そのような可能性があることを中国やロシアが許すわけがないではないか。にもかかわらず、中国やロシアが、北朝鮮を核実験後にも庇うようなコメンテーターの発言は、非常に幼稚であり、国民を惑わす国益に反するコメントである。

 アメリカにとって、北朝鮮という国は、まったく必要のない国だ。消滅しても、何も困らない。ならば、何故、アメリカは躍起になって北朝鮮と交渉をしたりし続けてきたのか? 答えは簡単である。アメリカにとって一番の同盟国である日本が、北朝鮮の隣国であり、同じく同盟国である韓国が北朝鮮の隣に存在するからだ。アメリカと日本の関係は、他国間の関係とはまったく違う。これは、もう兄弟以上の仲と言っても過言ではない。このような言い方をすると、目くじらを立てる人々も日本には多かろう。しかし、現実を見据えて頂きたい。日本の戦後の復興は、どのようにして為されたのか。日本の戦後の平和は、どのようにして維持されたのか。それは、アメリカがいてくれたからここまでこられた、と言っても過言ではない。アメリカは、勝手な国である。だが、アメリカが、先の戦争での戦勝国でなければ、日本はここまで経済発展し、戦後60年平和を維持することもできなかったはずである。

 一部の日本人は、日本はアメリカの州のように成り下がっているのはけしからん、早く独立国に自立しなければダメだ、駐留アメリカ軍もどんどん排除しなければならない、と言い立てる。だが、自衛隊を軍隊にすることも反対だ、憲法を改正することも反対だ、と矛盾したことばかりを彼らは言い立てる。だが、この議論はおかしい。自立するならば、自国で軍隊をもたなければならない。平和憲法を維持し、永遠の不戦を貫き通すのであれば、日米同盟は維持しなければ、日本の安全保障は維持できない。どちらもダメ、丸腰で平和を訴える、などという発想は理想論であり、机上の空論でしかない。唯一の被爆国である日本が、地球上のどの国よりも、平和と非核を訴えなければならないのは、誰もが認識している。ある意味、戦後日本人に課せられた使命である。だが、その使命を果たすにも、国が存続しなければ、果たしようがない。しかし、北朝鮮のようなナラズ者国家やテロリスト達は、世界中に沢山いる。また、どこの国も自国の国益と思惑で行動を起こす。どこの国が攻めてこないとも限らない。国には、国民を守るという義務がある。丸腰では何もできない。そのような日本の状況やメンタリティーを理解しているからこそ、アメリカは日米同盟を戦後60年大切にしてきてくれたのだ。そのことを忘れてはならない。だから、昨日のように北朝鮮が核実験を強行すれば、即座にシーファー駐日アメリカ大使は、日本と韓国の安全を守るべくアメリカは全力を尽くす、というようなことを発表してくれるのだ。アメリカにとって、北朝鮮などは眼中にもない必要ない国であるにもかかわらず。

 ただ、北朝鮮が遠距離ミサイルや核を開発したとなると、話は少々違ってくる。アメリカは、北朝鮮による拡散を何としても阻止しなければならない。例えば、反米で燃え狂うベネゼエラのチャベス大統領と北朝鮮は、非同盟諸国会議を通じ親交を持ち出した。ベネゼエラという国は、案外知られていないが産油国である。天然資源にも、恵まれた国である。採掘権をアメリカから奪還した昨今得た豊富な資金を利用して、ベネゼエラが北朝鮮より遠距離ミサイルと核弾頭を購入すれば、直接的にアメリカの脅威となる。何故ならば、南米ベネゼエラからアメリカは、完全なる射程内になるからだ。イランにしても同じことがいえる。万が一、北朝鮮が、遠距離ミサイルと核弾頭をイランに販売すれば、イランの射程内に、イスラエルが入ってしまう。これらのことを、アメリカは恐れているのだ。よって、如何なることがあっても、アメリカは北朝鮮の遠距離ミサイルを含め、核兵器の拡散を未然に阻止しなければならないのだ。そして、その阻止行動は、中途半端なことではならない。完全なる阻止にならなければならない。ということは、破壊してしまうということしか選択肢はないということなのだ。

 軍事制裁を実現するには、国連での政治的な動きが必要になる。国連憲章第41条や第42条を順次尊重して行動に移さなければ、アメリカ自身がナラズ者国家という謗りを受けることになってしまうからだ。だが、抜け道はある。アメリカは、その抜け道をある意味得意技としている。キューバ危機の際をはじめ、多くの場面でそのような荒業をやってのけた。それは、海上封鎖による臨検である。北朝鮮に出入りする船舶を、海上封鎖し臨検することによって、北朝鮮への物資の出し入れを完全に阻止してしまうという兵糧攻めである。その名目は、簡単である。核兵器関連品の拡散を未然に防止するための臨検ということで理由は十分である。これは、金融制裁以上に、大きな効果を発揮する。そのことを、アメリカは経験から学んでいる。海上封鎖と臨検は、ある意味軍事行動への第一歩であると言っても過言ではない。何故なら、兵糧攻めにあったターゲット国は、必ず「窮鼠猫を噛む」で臨検を実施するアメリカ軍相手に小競り合いを起こす。そうなれば、アメリカの思う壺である。自己防衛を大義名分に、軍事行動へ踏み切れる。太平洋戦争開戦前、日本へ対してアメリカが行っていた制裁措置を思い起こして頂ければ、直ぐに想像がつくことである。多分、非常に早い段階で、北朝鮮へ対しての制裁措置として、アメリカは海上封鎖を実施するであろう。

 さて、最後に、それではそのような事態に陥った場合、北朝鮮にはどのような選択肢があり、どのような選択肢を北朝鮮は選ぶであろうかということだ。選択肢は、二つだけである。リビアのカダフィ大佐が為した方法と、イラクのフセイン大統領が為した方法である。リビアのカダフィ大佐は、自分の命の保障と現状の生活を維持することを条件に、アメリカに対して実質降伏したも同然で、九死に一生を得た。一方、イラクのフセイン大統領は、最後の最後まで降伏せず逃げ惑った。しかし、軍事攻撃を受け全てを失い、最終的には囚われの身となり辱を晒している。まだ、殺されなかっただけでも、命拾いをしたと感謝してしかるべきである。金正日にも、この二つの選択肢しか残されてはいない。自分の命乞いと現状の生活維持を条件に、無血開城する方法。もう一つは、最後の最後まで突っ張り、アメリカへ対し死なば諸共の戦いを挑み潔く散る。選択肢は、もはやこの二つだけである。当然のことながら、それまでの経緯等は、状況に応じて色々なケースが有り得るであろうが、結論的に言えば、この二つの選択肢しか残されていない。

 核実験を実施し、強気の瀬戸際外交でここまできた金正日だが、案外最後は格好が悪いことになるような気がする。何故ならば、彼ほど命やモノへ対して執着心の強い男はいないと聞き及ぶ。彼の目標は、唯一つ。自分が生き残り、現在の贅沢三昧の生活を維持するということだけだ。彼にとっての、アメリカへ対しての最低限の条件は、それだけである。よって、ここまでナラズ者よろしく大立ち回りをしてきたが、案外簡単に手の裏を返し、アメリカに媚を売り命乞いをする可能性も大きい。その後、また自分の身が安泰となれば、再び手の裏を返すということも有り得るが。それが、金正日の常套手段で、その手法にアメリカは、今まで翻弄され続けてきた。その経験が、アメリカをどのように突き動かすかに、金正日の存亡は掛かっていると言っても過言ではない。どちらにしても、今後の動向を見守る必要がありそうだ。
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by seizaikai_club | 2006-10-10 14:45 | 朝鮮半島情勢

最後の切り札を切り「核」という新たなカードを手にした北朝鮮の誤算

最後の切り札を切り「核」という新たなカードを手にした北朝鮮の誤算
2006年10月9日

 本日、日本時間の午前10時35分頃、北朝鮮が予告どおり核実験を強行した。多くのコメンテーターが、北朝鮮の核実験宣言以降、全く信憑性のない十人十色のコメントをしていた。その多くは、核実験が実施される可能性は五分五分というものであった。しかし、10月3日に、北朝鮮が近い将来核実験を実施する、と北朝鮮国内外へ向けて宣言した段階で、実験が実施されることは100%確実であった。何故ならば、核実験宣言が国外だけに為されているものであったなら、ハッタリである確立もあり実施される確立は五分五分であったかもしれない。しかし、あの核実験宣言は、同日中に、国外のみでなく国内へも為された。その段階で、核実験が実施されることは明らかであった。自国民の信頼を失うようなことは、独裁国家の場合絶対にしない。自国民へ対して為した宣言は、必ず実行に移す。このことは、独裁国家の常識である。アメリカは、10月3日に北朝鮮政府が国内へ対しても核実験宣言をした段階で、本日の核実験実施を100%予想していた。同時に、核実験実施の日時も、今日であるのではという見方を当初よりしていた。何故ならば、前回のミサイル発射実験は、7月4日(フォース・オブ・ジュライ)アメリカの独立記念日を狙って行われた。そして、10月の第二月曜日即ち今日は、コロンバス・デイであり、アメリカにとっては、独立記念日に次ぐ大切な祝日であるからだ。

 北朝鮮、いや金正日は、今までアメリカとの駆け引きで、結果的には常にアメリカを譲歩させることに成功してきた。その度ごとに、アメリカは煮え湯を飲まされてきた。そして、プライドの強いアメリカが、北朝鮮には面子を潰され続け、それでも譲歩せざるを得ないということを繰り返してきた。何故ならば、朝鮮半島情勢は、アメリカの思惑のみで行動に移せないという複雑な事情があったからだ。それは、一番の同盟国である日本と38度線越しに非常に危険な状態に晒されている韓国を守らなければならない、というスパーマン、アメリカのジレンマがあったからだ。金正日は、そのようなアメリカのジレンマを熟知し、いつも交渉を有利に運んできた。

 今回も、金正日はいつも通りにコトが運ぶと高を括っていたに違いない。いや、今でも、金正日の思惑通りにコトが運ぶと確信しているはずだ。何故ならば、アメリカが北朝鮮を攻めれば、間髪を入れず北朝鮮はソウルと日本を攻撃する。日本の場合は、まだ韓国よりも多少距離があるので、危険度は韓国ほどではない。だが、韓国の場合は、首都であるソウルが、38度線にあまりにも近すぎる。僅か24キロメートルという近さだ。北朝鮮がソウルを攻めるのに、ミサイルなど必要ない。遠距離砲でも、十分攻撃できる距離だ。そして、万が一、北朝鮮が捨て身でソウルを攻撃したら、ソウルは30分以内で焼け野原になる。そのことは、軍事戦略上の現実であり、軍人にとっては常識だ。金正日は、ソウルの喉下に短刀を突きつけているのである。そのことで、アメリカが北朝鮮を無闇に攻撃できないと確信している。だが、それは今までのことだ。今回のアメリカは、今までとは違う。それには、色々な理由がある。クリントン前大統領のように、ブッシュ大統領は軍事行動に対し及び腰ではない。同時に、アメリカのプライドを誰よりも優先する大統領だ。また、ライス国務長官も、筋金入りのタカ派だ。北朝鮮も、瀬戸際外交を行っているが、ブッシュ大統領とライス国務長官は、リスキーな瀬戸際行動を実行に移せる勇気を持った指導者達だ。そして、何より、アメリカ国内で、これ以上今までのように北朝鮮に振り回され、過去経験したように面子を潰されるべきではない、という思いが特にワシントンには充満している。アメリカ人のそのような心理を、金正日は今回読み違えている。アメリカ人は、日本人のようにどこまでも耐え忍び我慢する国民性ではない。我慢することを得意としない国民性である。それが、ここまでプライドを捨てて我慢してきた。もう、我慢の限界は疾うに過ぎている。それどころか、我慢の苦手なアメリカが、今まで我慢した分、その怒りは頂点に達している。それに、アメリカにとって北朝鮮は、他の対立国とは違い、何の意味もない国である。消滅しようが、そんなことはまったく本来意に介さない存在なのである。そこのところを読み違えているところに、金正日の大きな誤算がある。

 金正日は、多分、最後の切り札である「核実験」というカードを切ったことで、「核」という新たなカードを手に入れたと得意気になっているはずだ。だが、今回はそのように上手くはいかない。確かに、アメリカは、今まで核保有国へ対して軍事行動を起こしたことはない。だが、それは、相手国が実用性のある核兵器を保有した、という認識の下に下した決断である。同時に、パキスタンなどそれら無理矢理核保有国に成り上がった国々は、何らかの理由でアメリカにとっては必要な国であった。しかし、北朝鮮は違う。アメリカにとっては、まったく必要のない国だ。そして、北朝鮮が手にしたと得意気になっている「核」は、まだ核兵器として実用性があるとアメリカは思っていない。複数の核弾頭は保有しているであろう。しかし、弾道ミサイルに搭載できるような核弾頭の開発にまでは至っていない、とアメリカは判断している。だが、そんなことは、一言も口にしない。何故なら、アメリカにとってそんなことを口にしても、何の得にもならないからだ。実用能力を未だ有していなくとも、北朝鮮が「核」を手にしたという事実さえあれば、アメリカにとっては軍事行動まで導きうる大義名分を手にしたことになる。それだけで、十分なのだ。金正日は、このようなアメリカの強かさを、今回は読み違えた。

 ヒル国務次官補の談話、ライス国務長官の談話、本日のブッシュ大統領の声明、そして、シーファー駐日アメリカ大使の談話を総合すると、アメリカが近く軍事行動へ向かって動き出す可能性は非常に高い。現在の世界情勢や世論を考慮すると、いきなり軍事行動を起こすことは有り得ない。だが、これからはアメリカの一番得意とする段階だ。まず、海上封鎖し、北朝鮮へ出入りする艦船全てを海上査察して北朝鮮へのあらゆる物資の出入りを封じ込める。当然のことながら、小競り合いが起こる。そこで、北朝鮮側が、些細なことでも、アメリカ側に手を挙げれば、それでアメリカは戦闘体制に移る大義名分を得る。そして、即座に、目にも留まらぬ敏速さで軍事行動を展開する。短期決戦となるであろう。ピンポイント攻撃に始まり、最終的には海兵隊の精鋭と特殊部隊による、拉致被害者ならびに政治犯救出作戦ということになるであろう。拉致被害者の救出に関しては、アメリカが手取り足取りで指導した、佐世保の海上自衛隊に所属する上陸用特殊部隊に救出作戦の主導権をとらせることになるであろう。その為に、一昨年より、カリフォルニアで、彼ら海上自衛隊の特殊部隊員へ対し、アメリカ海軍特殊部隊シールズが隠密上陸作戦の訓練を指導してきたのだ。また、韓国軍の中にも、そのようにアメリカ軍より手ほどきを得た特殊部隊がおり、彼らは38度線を越え韓国人拉致被害者ならびに政治犯救出名目で北朝鮮領土内へ攻め入るであろう。勿論、アメリカの指揮下である。

 しかし、今回、北朝鮮という国を壊滅させるまでの戦争に発展させようと、アメリカは思っていないはずである。それでは、さすがのアメリカにとってもリスクが大きすぎる。できるだけ短期間で、終結してしまいたいと思っているはずだ。出来れば、金政権を崩壊できればと思っているであろう。だが、無理はしないはずだ。何故なら、アメリカは、金正日が、国のプライドより自らが存命することを最優先していることを知っているからだ。よって、全面戦争にまで発展させようとは思っていない。そうは言っても、相手があることである。金正日の出方次第では、どのような展開になるかはわからない。1994年の朝鮮半島危機の際のように、「死なば諸共、30分でソウルは火の海にしてやる」などと強気なことを言って、実際にソウルを攻撃したりすれば、全面戦争に発展する可能性もある。確立的には、小さいであろうが。

 いずれにしても、金正日、金政権、そして、北朝鮮が奈落の底に向かって、転がりだしたことは間違いない。あれだけの悪行を為してきた金正日である。地獄に落ちるのは、誰の目にも明らかである。そして、その日が近づいていることも。
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by seizaikai_club | 2006-10-10 02:31 | 朝鮮半島情勢

今後の国際情勢を暗示:小池・ハドリー両補佐官は中東のエキスパート

今後の国際情勢を暗示:小池・ハドリー両補佐官は中東のエキスパート
2006年10月5日

 ハドリー大統領補佐官は、並みいる補佐官達の中でもトップに位置する国家安全保障会議(NSC)担当補佐官である。小池百合子首相補佐官も、国家安全保障問題担当補佐官に、安倍新首相に任命された。そして、ハドリー大統領補佐官も小池首相補佐官も共に、カイロでの生活経験がある中東のエキスパートだ。小池首相補佐官は、カイロ大学を卒業し政治家になった。覚えている方も少ないかもしれないが、彼女は、カイロへ留学する直前まで、政治評論家の竹村健一氏がメイン・コメンテーターを務めたテレビ東京のニュース番組で、キャスター兼竹村氏のアシスタントを務めていた。今でもハッキリと記憶しているが、その番組を去る時に、カイロ大学に留学することを公表し、竹村氏が多大なる期待を寄せていた。そして、その期待に反することなく帰国し、政治家へと転身した。

 日本と中東は、非常に密接な関係にある。にもかかわらず、国民レベルで言えば、日本人はあまりにも中東のことに関して知らない。また、知ろうともしない。昔に比べれば、中東に関しての番組や報道も多くなった。だが、嘗ては皆無に等しかった。私の不勉強もあったのであろうが、渡米しアメリカの大学で勉強を始めた当初、中東に関することであまりにも私自身が無知であったことに気付かされた。ウエスト・バンクの問題にしても、アメリカでは、国民レベルで議論もするし、日々ニュースとしても取り上げられていた。しかし、日本では、その頃、中東に関しての情報は、枯渇していた。皆無と言っても過言ではないほどであった。そのような状況下、中東に留学することを決めた小池女史の決断は、勇気あるものであった。その先見性は、「見事」としか言いようがない。石油という絆で結ばれた中東と日本、切っても切れない間柄である。小池首相補佐官のような人材は、国益を考えても非常に重要である。

 昨年亡くなられた、アメリカのジャーナリスト故ピーター・ジェニング氏も、アメリカ人で(厳密には、彼はカナダ人であったが、アメリカのメディアの特派員として)最初の中東特派員に自ら買って出て、その後の人生を実りあるものにした。この地球上に於いて、中東はある意味非常に大切で重要な地域である、ということが言えよう。しかし、その重要な地域である中東では、昔から、紛争が絶えない。一つには、その民族性に起因するところも大きい。

 本日、小池首相補佐官は帰国する。昨日まで、数日間、ハドリー大統領補佐官等と重要な会談をいくつもこなしていた。その最中、北朝鮮は、核実験を近い将来行うということを発表した。そして、カイロに滞在中のライス国務長官は、北朝鮮の姿勢を痛烈に批判した。と同時に、万が一核実験を実行すれば、極めて遺憾なる問題であり、深刻な制裁措置に至る可能性さえ有り得る旨を示唆した。このライス国務長官の発言を、関係各国は、真摯に受け止める必要がある。

 アメリカには、一定の行動パターンがある。まず、国務長官や国家安全保障会議担当大統領補佐官が和平行脚をして回った直後に、軍事行動が行われる確立は、過去の例からすると非常に高い。特に、ライス国務長官は、補佐官時代から、ブッシュ大統領の分身とさえ言われているタカ派である。その言動には、かなりの重みがある。

 アメリカからすると、北朝鮮問題は、単に東アジア地域だけの問題ではなくなった。何故ならば、北朝鮮が兵器売買や各種犯罪的行為を世界レベルで行っていることは明白で、テロリスト達との繋がりも確認されているからだ。そして、アメリカが一番懸念しているのが、北朝鮮とイランとの水面下での繋がりである。先日、キューバで行われた非同盟諸国会議の場でも、イランと北朝鮮の共闘体制は証明された。また、今年日本海に向けて行われた北朝鮮による7発のミサイル発射実験の際にも、事前にイランから視察団が北朝鮮に入国していたことが確認されている。このような状況下、アメリカ政府、ブッシュ政権は、北朝鮮問題とイラン問題を切り離して考えていないということだ。特に、最近のライス国務長官の言動を見守っていると、間違いなく北朝鮮とイランを一味として扱っていることが窺える。ここのところが大切なところである。今までの視点であると、アメリカは一度に二箇所で戦争は起こせないと思っていた。しかし、アメリカの視点は、間違いなく変化してきた。北朝鮮とイランが一味である以上、対北朝鮮と対イランの問題は、別々の問題ではなく一つの問題であるということになる。だとすれば、北朝鮮が、このまま、今までのブッシュ大統領の判断基準のままであると思い込み、核実験を強行すれば、金正日は間違いなく判断ミスを犯すことになる。どういうことかというと、今回は、アメリカは本気で制裁措置を即時行うということである。その制裁措置とは、究極の形で行われる可能性は非常に高い。北朝鮮と中東と両地域で戦争が起きても、二つの戦争ではなく、一つの戦争という捉え方を、ブッシュ政権はしだしたように思われる。そうはいっても、物理的には、やはり二箇所での二つの戦争という形になってしまうが、そこは、アメリカが、面子と経済的人的負担のジレンマに立たされるということであろう。そして、どこら辺で折り合いをつけるか、ということで結果は変わってくる。

 現状、色々な条件が揃いだしている。盧武鉉は、北朝鮮問題に関し、アメリカに対しハードな姿勢を継続している。そのような状況下、次期国連事務総長に、潘基文(パンギムン)韓国外交通商相が選出される可能性が高まった。このことでは、日本にとってどのような影響がでるかわからない。だが、アメリカにとっては、充分利用できる良い材料の一つとなった。潘基文氏は、どちらかというと穏健派で風見鶏的な性格が強い人である。現状、盧武鉉大統領に媚を売るような言動をしているが、アメリカは潘基文という人物は御し易いと判断したようだ。にもかかわらず、韓国は、後先を考えず、国連の事務総長に韓国人が選出されるということで浮かれている。だが、実際には、潘基文氏が国連の事務総長を務めることになれば、国際社会に於いて、非常識な、他国の連携や歩調を崩すような立場はとれない枷を負うことにもなる。ということは、結果的に、北朝鮮へ対しての制裁措置を決議する際にも、今までのように韓国大統領の立場や思惑だけで反対したりという国際社会を無視したような姿勢をとることができなくなるということだ。

 また、ここにきて、ラムズフェルド国防長官の更迭問題がワシントンで取沙汰されている。そのことも、今後の北朝鮮問題やイラン問題を中心にする中東問題には、大きな影響を与えるであろう。というのは、その分、強硬派であるライス国務長官の影響力が間違いなく増大するからだ。現状、ライス国務長官の様子を見ていると、対外的には何とか軍事行動を回避したいがために行脚しているように見える。しかし、その実、本当は、軍事行動に移りたいのではないか、と思われる言動も多くしている。何とか軍事行動をせずに踏み止まっているが。それは、ブッシュ大統領の支持率等の影響であろう。ブッシュ政権二期目が始まった直後より、ライス国務長官は、足しげく中東やヨーロッパ諸国を行脚して回っている。大体、このような動きの後、アメリカは軍事行動に出る。

 いずれにしても、非常に緊張した状況になってきたことだけは間違いない。核放射性物質探査機だけを残し、ピンポイント攻撃用の最新鋭戦闘機の多くを沖縄からアメリカ本土の基地へ帰還させた直後の北朝鮮の核実験発表。双方、計算ずくめでの行動であることは間違いない。

 ただ、アメリカにとって中間選挙は、非常に大きな意味を持っている。その中間選挙前に、このような発表を北朝鮮がしたということだけでも、間違いなくかなりアメリカの神経を逆撫でしている。これで実際に核実験を行えば、それは何が起こっても不思議はない。安倍新政権が、集団的自衛権の法解釈の検討を早急に進めることを明らかにした。このことからも、状況が緊迫しだしていることが窺える。万が一、日本近海や上空で、アメリカ軍が北朝鮮軍に攻撃され打撃を受けた場合、日本の自衛隊がどこまで援軍として参戦できるか、どのポイントを判断ポイントに設定するか、というような問題を早急に解決しておかなければ、有事の際に二の足を踏むことになってしまう。そうなれば、日米関係自体にヒビが入りかねない。いずれにしても、東アジアが、かなりの緊張感を帯びてきたことだけは間違いない。
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by seizaikai_club | 2006-10-05 14:09 | 国際情勢

「政治をもっと身近に」をスローガンにして、日本人にもっと「愛国心」を喚起すべく語る。
by seizaikai_club
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政財界倶楽部代表  恩田将葉
 「政治をもっと身近に」をスローガンに、一人でも多くの日本国民が政治に関心を持ち、参加してくれるよう、執筆活動、出版活動等を通じ「愛国心」啓蒙活動をしている。国際化が進む世界の中で、日本の政治も若者の手で変革しなければならない!!

 政財界倶楽部代表恩田将葉は、 アメリカ合衆国カリフォルニア州で約9年間生活。その間、サン・フランシスコ州立大学(San Francisco State University, SFSU)国際関係学部で国際関係学と政治を学び、朝鮮半島問題専攻で卒業。その後、暫くアメリカで現地法人の会社(People Intertrade, Inc.)を経営した後帰国。帰国後は、記者と編集者を経て出版社である株式会社ぴいぷる社と株式会社政財界出版社、そして、夕刊紙「内外タイムス」を発行する株式会社内外タイムス社の社長に就任。活字業界一筋に生きてきた。現在は、経営から一歩引き、国際情勢ならびに政治を中心に、ジャンルを問わず執筆活動を継続中。プロの文士として、随筆、小説、脚本等あらゆる分野で執筆活動を展開し、文章を綴ることを天職としている。そのかたわら、日本に、嘗てのごとく「愛国人」を増やすべく、「政治をもっと身近に」をスローガンに、自ら「政財界倶楽部」を運営している。

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