震災後、取材のため被災地に入った。言葉がないというのが正直な印象だ。涙が止まらなかった。地震の被災地というよりも戦場のようであった。想定外、予想外という言葉が盛んに紙面を踊っていたが、正に読んで字の如くである。石原慎太郎が、「天罰」という言葉を使いバッシングされていた。しかし、彼が何を言わんとしていたかは理解できる。被災者の心情を考えれば適切な言葉ではなかったかもしれない。だが、天が日本人に対し警鐘を鳴らしたように私も思う。
人工衛星から地球を眺めると、世界中で一番日本が明るく輝いている。初めて私が渡米した際一番驚かされたことは、三十五年も前のことだが、アメリカ人が電気や水を大切にしていたことだ。無駄遣いを絶対にしない。夜になると間接照明が主役で、日本の家庭のように明るくすることはない。停電も時々あった。だが、停電になっても、彼等は停電を楽しんでいた。ロウソクを立てロマンチックな一時を過ごす。文句を言うのではなく、何が起きても前向きに生活を楽しんでいた。アメリカ人のそんなところに私は驚かされた。
東日本大震災に思うこと
2011年5月13日
そんなアメリカ人の面白い話がある。偶然ロスに出張していた時のことだ。ロス大震災に遭遇した。ホテルの部屋にいたのだが、揺れが止まり部屋の扉を開けてみると、一糸纏わぬアメリカ人男女たちが非常口に向かって走っていた。服より命ということだ。何とも解り易い。あまり後先を考えず、その場を生き抜く。それがアメリカ人の強さだ。だから、どんな苦難をも乗り越えることができる。我々が思うほど、彼らは狡賢くはない。ただ、間違いなく言えることは、感覚的に今必要なことは何かということを瞬時に判断し対応する危機管理能力がずば抜けて優れている。そんな彼らの能力が、今回の震災でも発揮された。
震災直後、オバマ大統領の命令が下り、第七艦隊が日本列島に集結した。彼らは直ぐに状況を分析し、日本政府の許可を取らず行動に移せる三沢基地の滑走路整備を開始した。同時に、仙台空港滑走路整備を日本政府に提案し兵士三十六名を現場に待機させた。被災地への玄関口確保だ。ところが、菅総理からの許可がでない。ここが日本人の問題だ。あまりにも型にはまり過ぎ、例外的に臨機応変な行動をとることができない。その結果、後手になってしまう。原発対処に関しても同じことが言える。決まり事よりも人命最優先。そこがアメリカ人の強さだ。
被災地を見聞しても同じことを感じた。多くの自衛官や消防隊員や警察官たちが、救援活動をしている。命令通り皆一生懸命だ。だが、その場の状況に応じ臨機応変に対応することが必要な時もある。日本人の弱点が露呈した震災でもあった。