国際関係における日本の政治状況を孫子の視点で見てみると
2010年6月1日
2500年ほど前、中国春秋時代、呉の王闔廬の下、兵法家孫武は「孫子の兵法」をこの世に産み落とした。「孫子」は、一般的に兵法書と言われているが、実は、人間とはなんぞや、と人間を分析した書であると私は思っている。人間の心理を熟知した孫武による、この世に残る「人間学」の最高傑作だ。その「孫子」の第一篇は、「計」である。「五事七計」すなわち、「道」「天」「地」「将」「法」の「五事」と「主」「将」「天地」「法令」「兵衆」「士卒」「賞罰」の「七計」から構成される。この「五事七計」に自らと相手の状況を当てはめて判断すれば、自ずと答えは見えてくるという教えだ。それでは、この「五事七計」に、日本の置かれた現状を当てはめてみよう。そうすれば、鳩山政権存続か否かの答えは自ずと見えてくるはずだ。
まずは、自らのことを見極める「五事」から見てみよう。「道」とは、民意である。政治家が民意を正しく理解し政治の場で実行しているかということだ。現状、鳩山総理が、小沢一郎が、民主党が、とても民意を尊重した政治をしているとは思えない。「天」とは時勢だ。これも、必ずしも満たされているとは思えない。朝鮮半島や台湾海峡の緊張感を、日本は無視できない。「地」とは、地の利だ。日本でなければならない理由、沖縄でなければならない理由、それは台湾海峡や朝鮮半島との距離、日本への物資運搬上、台湾海峡は安全を確保しなければならない海域であるなど、これに関しても沖縄でなければならない意味がある。「将」とは、統括する人物だ。鳩山総理では、大いに能力の問題がある。「法」とは、政府を運営するための規律だ。社民党が連立を離脱したり、意見を異にして福島大臣が更迭されたり、亀井は勝手し放題であったりと、この条件も満たされているとはとても思えない。
次に相手のことを見極めるための「七計」を見てみる。「主」は、敵と味方とどちらが優れているかということだ。アメリカのオバマと比較しても、韓国の李明博と比較しても、中国の胡錦濤や温家宝と比較しても、鳩山総理があらゆる面で劣っていることは間違いない。「将」とは、軍である。この場合、政府と解釈する。これもダメだ。まとまっていない。社民党は連立から離脱し、社民党の福島は更迭され、辻本は辞任した。亀井は好き勝手をしている。「天地」とは、自然条件がどちらに有利かということだ。これも、残念ながら鳩山総理に勝ち目はない。日本でなければ、沖縄でなければならない理由はハッキリとしている。「法令」も、現状民主党政権が為すことは、過半数議席を使って強行しているだけで、そこに正義はない。「兵衆」、ここでは民衆と当てはめよう。これも残念ながら、今の日本国民はまとまっていない。皆、自分勝手に自己主張をしているのが現状だ。「士卒」、これは政治家と当てはめてみよう。今の与党の政治家は、熟練もしていなければ強くもない。「賞罰」、これも公正に政府が判断しているとは思えない。「孫子」の作者孫武曰く、これらの「五事七計」に当てはめて物事を見て判断してみれば、実際に戦闘が行われる前に勝敗を知ることができる。正に、鳩山首相による民主党連立政権の行く末は、見えてしまったようだ。結論は、もう出ているということだろう。