沖縄基地問題の行方
2010年4月21日
5月末までに決着をつけると約束した鳩山首相だが、徳之島でも1万5000人規模の反対集会が開催されてしまい、二進も三進もいかない状態に追い込まれた。ある意味、浅はかというか、根回しなしでこんな大事な問題を解決しようとすること自体、信じられない話だ。もしかして、実は本命の話はまだ伏せられていて、徳之島はダミーであったとさえ思ってしまいたくなるような、あまりにも幼稚極まりない話であった。大体、こんなやり方をしていたら、島民以外の人間が、反対運動を扇動することも可能だ。自民党にだって、アメリカにだって、そのぐらいのことはお手の物だ。何とも、呆れて開いた口が塞がらない。
ここまでくると、もう選択肢は限られてくる。沖縄に今まで通り残すか、あるいは沖永良部に移転を考えるかだ。沖永良部には、嘗て米軍の基地があった。海兵隊のヘリコプター基地もあり、島民の親米感情も悪くはない。島自体は、鹿児島県に帰属するが、沖縄本島からも近い。サンゴ礁でできた、まっ平らな島だ。基地にはもってこいである。火山がないことから、ハブも生息していない。いるのは永良部蛇という毒をもったウミヘビだが、性格は極めて温厚で、この蛇に噛まれたという話は聞かない。あまり観光誘致もしておらず、宿泊施設も数えるほどしかない。一部ダイバー達にとっては、メッカのような島だ。海はこの上なく綺麗だ。よく米兵が嘗て沖縄の海は世界一といった海は、実は沖縄本島ではなくこの沖永良部の海のことだ。
島民の所得水準も非常に高い。全国の村の中ではトップクラスだ。その上、沖永良部島民には、アメリカ軍より恩恵を受けたという経験があり親米感情がかなり高い。皆さんは、永良部ユリという花をご存じだろうか。純白のユリだ。よく切り花にされ販売されている。明治35年に、英国人で横浜において輸出業を営んでいたアイザック・バンディングが、沖永良部に来島し,沖永良部和泊で商売をしていた市来崎甚兵衛に集荷させたのが始まりだ。この永良部ユリを、アメリカ軍が基地を沖永良部から撤退する際、島民への礼として、島民が自立できるようにアメリカ国内への販売ルートをつけてくれたのだ。アメリカでは、葬式の際、白いユリを必ず使用する。そのため、その消費量は非常に大きい。現在、アメリカ国内で販売される永良部ユリのシェアの大半を沖永良部産が占めている。しかも、米軍基地経由で、ほとんどが輸出されているのだ。このようなこともあり、沖永良部島民の多くは親米感情を抱いている。
多分、アメリカ軍側にも受け入れやすく、島民側からも受け入れやすい、沖縄本島付近の島では、もっとも可能性が高いのが沖永良部であろう。もし、沖永良部がダメだというのであれば、この話は振り出しにもどり、既存案のまま進行するほか手はない。そうなれば、国民の鳩山政権への信頼度は、奈落の底に落ちるであろう。そもそも、選挙のことばかりを考え、社民党や国民新党などと連立を組んだことから、間違いは始まった。あまりにも場当たり的で先見性が欠落し言動が招いた国益に関わる重大な事態だ。さあ、沖縄基地問題を、鳩山政権はどのように乗り越えるのであろうか。お手並みを拝見しようではないか。